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【第10回/全16回 文字数:1827字】

伝統的なプロセス:新世代のテクノロジー

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模型制作に精通しているクロウリーにとって、発射から宇宙船内のシークエンスに至るミッションの一部をミニチュアを使って再現することは素晴らしいアイデアだった。クロウリーは説明する。「デザインを決める上で、よく模型を使っていたんだ。そうすれば3次元でデザインを確認できるからね。3Dプリンターを14 台持っているから、1晩で何でもプリントできるし、すぐに組み立てることもできる。3Dプリンターのおかげで、デザインを採用すべきかどうか即座に決断することができた。模型制作に凝りすぎることがなくなるし、今では主要なツールだ。3Dプリンターは進化し続けていて、今では3.5フィート(約1メートル)の立方体を印刷できるものもある。美術部門内だけでミニチュアを3Dプリントできるし、そのまま撮影にも使用できる。昔ながらの技術を再現するための新しいテクノロジーなんだ」
クロウリーは『ダークナイト』(08)、『インセプション』(10)、『インターステラー』(14)などでタッグを組んだイアン・ハンターを招集し、模型制作監修を任せた。「本作のミニチュア制作で課題となったのは、ドラマ作品だという点だった。ファンタジーやSFなら、観客もある程度フィクションとして映画を見ている」とハンターは語る。「でも今回は完全にリアルな宇宙船の模型を作り、観客に100パーセント本物だと思わせることが重要だった」
NASAが記録したジェミニ計画とアポロ計画に関する膨大な量の映像は、模型制作の過程において助けとなる一方、障害でもあった。「ミッションに関する大量の映像は、模型を細部まで正確に作る上では助けられた。でもこれらの資料は観客もアクセスできるから、私たちの制作物をチェックできるということだ。ミッションの詳細に適合するような、可能な限りリアルなミニチュアを作ろうと努力することが重要だった」とハンターは続ける。

3Dプリント技術の進歩により、非常に短期間で時代は変わったとハンターは説明する。「HBOのテレビシリーズ『フロム・ジ・アース[人類、月に立つ]』(98)の制作に携わったが、当時は大半を手作業で作った。まず宇宙船のデザインを描いて、模型を手作りした。あれから技術は大きく進化し、今では全く違う方法で模型を作れるようになった」
ビッグレップ社の3Dプリンターを使用し、模型制作を進めたとハンターは言う。
「まずコンピューターで3D 模型をデザインし、採用できると思ったらパーツに分解し、別の技術で異なるピースを制作した」
3Dプリントの恩恵を多大に受けたものの、リアル感の追求にはある程度の手作業も必要とされた。ハンターは振り返る。「最先端技術でパーツを作った後は、やはり手作業が必要となった。職人たちがパーツを組み立てて塗装し、当時の雰囲気を反映するために風合いを加えた。例えばアポロの司令・機械船(CSM)は司令船がメタルテープで覆われている。だから私たちも手作業で表面にアルミのテープを貼る必要があったんだ」
月着陸船は金箔と黒い陽極酸化ホイルでできた遮熱材で覆われている。ハンターたちにはあらゆる現代技術には精通していたものの、本物に近づけるためには、手作業で素材をカットして模型に貼り付ける必要があった。

模型制作チームにとってもう1つの課題は、メインユニットが使用する実寸モデルと撮影方法に模型を合わせなければならない点だった。ハンターは説明する。「月着陸船はミニチュア版とジンバル/LED用の実寸版の両方が作られた。月面のシーンでは実寸のセットが使用されるが、月面までの飛行シーンではミニチュア版が使われる。だから、メインユニットの美術監督と連携して模型のディテールと色合いをマッチさせることが重要だった。だから、実寸版とミニチュア版のグラフィックは両方とも同じデザイナーが手掛けている」

ハンターはアニマティクスをベースとしたファウンド・フッテージを活用してチャゼルと認識をすり合わせた。ハンターは振り返る。「本物のミッションのアニマティクスベースのファウンド・フッテージを用意した。デイミアンはシーンの雰囲気やムード、タイミングに関するガイドラインを私たちに渡していた。ミニチュアは音楽に合わせて登場し、全ての要素をイメージと結びつける必要があった。だからイメージが決まると、デイミアンの指示を考慮に入れながら実現していった。そうすることで、彼のビジョンを実現したんだ」