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【第12回/全16回 文字数:2589字】

ジェミニ計画:宇宙飛行士のキャスティング

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アームストロング以外の宇宙飛行士役には、観客を魅了することができる演技派で、実在の人物に似た点がある俳優の起用が重要視された。「知性と強さ、そして高い能力を表現することが重要だった。まるで当時のジェミニ計画とアポロ計画のドキュメンタリー映画を見ているかのような感覚を観客に与えるためだ」と製作のクラウスナーは言う。

ジェミニ計画は人類を月に送り出すというアポロ計画の訓練のために生まれた。マーキュリー計画とアポロ計画の間にあたる1965年3月から1966年11月にかけてミッションが遂行された。
 ジェミニ計画に選ばれたのが、ニール・アームストロング(ライアン・ゴズリング)、エド・ホワイト(ジェイソン・クラーク)、ジム・ラヴェル(パブロ・シュレイバー)、ガス・グリソム(シェー・ウィガム)、ピート・コンラッド(イーサン・エンブリー)、エリオット・シー(パトリック・フュジット)、デイヴィッド・スコット(クリストファー・アボット)、バズ・オルドリン(コリー・ストール)、リチャード・F・ゴードンJr.(スカイラー・バイブル)らだ。
 ジェイソン・クラークが演じるのは、1965年のジェミニ4 号計画でアメリカ人として初の宇宙遊泳に成功したエド・ホワイトである。クラークは役を演じる運命だったと冗談半分に語る。「私が生まれたのは(1969年)7月17日で、ニールたちが月に向かって出発した日だった。だから両親はよく私を『アームストロング・クラーク』と呼んでからかっていたよ。脚本を読んですぐに、これは人類史上最も偉大だと言われる偉業についての特別な作品になると確信した。そしてこの偉業達成において、エドは重要な役割を担っていたんだ」
 クラークもエド・ホワイトの息子であるエド・ジュニアと娘のボニーと面会する幸運に恵まれた。「エドに関する資料はたくさん存在していて、アメリカ人初の宇宙遊泳を成し遂げた人物だから、映像も残っている。リックやマーク(・アームストロング)、ボニーやエド・ジュニア、そしてNASAの関係者に会えて、貴重な話を聞くことができたのは特別な経験だった。皆がすごく協力的で本当にラッキーだった」

パブロ・シュレイバーが演じたジム・ラヴェルは、アポロ11号の予備搭乗員(船長)だった。『アポロ13』(95)で主演のトム・ハンクスが彼を演じたことで、一躍有名となった人物だ。
 本作でのラヴェルは、ニール・アームストロングとデイヴィッド・スコットが飛行したジェミニ8号計画で通信担当官としてまず登場する。チャゼル監督が細部に至るまで強いこだわりを見せたことに、シュレイバーは感謝していると言う。「デイミアンは今まで一緒に仕事をした中でも特に慎重で入念な監督だ。出演が決まるとすぐ、監督から膨大な量の資料を添付した長いメールが届いたんだ。役作りの上で本当に助かったよ」

製作のゴッドフリーは、ガス・グリソムこそ船長にふさわしい究極の宇宙飛行士だと説明する。「当時はアポロ1号のクルーが最終的に月面着陸を実行すると考えられていた。人類初の月面歩行を成し遂げるのは、グリソムだったかもしれないんだ」
 グリソムを演じたシェー・ウィガムは、製作陣にとってまさに本人そのものだったようだ。ゴッドフリーは続ける。「ガスは無愛想でタフで古風な男だった。今にも怒鳴り声を上げそうなタイプだ。シェーにはガスと同じ気質や威厳があったから、ガスの特徴を、次世代の宇宙飛行士たちとうまく対比させたかったんだ」
 フロリダ出身のウィガムにとって、NASA 計画は身近なものだった。実際、彼は自宅の近くでスペースシャトルの打ち上げを目撃したという。「ケープ・カナベラルから30マイル(約50キロ)ほどの場所で育ったから、打ち上げは全て見物したよ。自分を含め、子供たち全員が月を見上げて言っていた。『いつかあそこに行ってみたい』ってね」

ジェミニ11号とアポロ12号で船長を務め、月面を歩いた史上3人目の人間となったピート・コンラッド役のイーサン・エンブリーは初めて実在の人物を演じた。エンブリーは振り返る。「ピート・コンラッドの伝記『Rocketman』を読んで準備を始めた。ピートに関する300ページもの情報を読んだおかげで役作りがいつもよりスムーズな一方、恐ろしくもなった。彼がどんな人物なのかをよく把握できたから、完璧に体現するためにベストを尽くそうと思った」

若き宇宙飛行士、エリオット・シーを演じたパトリック・フュジットはこう語る。「ピート・コンラッドやエド・ホワイトのように、たくましい軍人が多い宇宙飛行士の中で、民間人のニールは少し孤立した存在だった。ジェミニ計画に参加した宇宙飛行士のうち、民間人はニールとエリオットだけ。だから、2人の間には他の同僚とは違う友情が芽生えていく」
 シンガーの脚本には共通点の多い2人のユニークな友情が見事に描かれており、フュジットはその点を称賛している。「宇宙飛行士たちは近所に住んでいて、そこで築かれた仲間意識がきちんと描かれている。職場では競争が激しかったけど、お互いを支え合う愛が存在していたことに温かい気持ちになったよ。彼らが家族のような関係だったことを伝えるのが重要だったんだ」

初期のジェミニ計画のハイライトは、デイヴィッド・スコットとニール・アームストロングが搭乗したジェミニ8号による、史上初の2台の軌道上でのドッキングである。それは、将来的に月面着陸を成功させる上で極めて重要なミッションだった。
 アームストロングと共にジェミニ8号の搭乗員となったスコット役には、クリストファー・アボットが起用された。機器の故障により、ジェミニ8号はアジェナ目標機とドッキングしたまま予期せぬ回転を始め、スコットは意識を失ってしまう。しかし、アームストロングの即断により回転は止まり、無事に地球へ生還することができた。
 以前はジェミニ計画についてほぼ知らなかったというアボットだが、ミッションの重要性についてすぐに理解したという。「ジェミニ8号のミッションが、NASAの未来が懸かっているほどに重要だとは知らなかった。厳密にはあのミッションは成功とは言えないけど、アジェナとのドッキングに成功し、事態を収拾して無事に帰還したことで、NASAと宇宙飛行士たちは月面着陸計画を続けることになる」