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【第16回/全16回 文字数:1370字】

時代に忠実に:衣装デザイン

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アーカイブ写真を含むNASAのデータベースのおかげで、衣装デザイン担当のメアリー・ゾフレスは当時の宇宙飛行士の服装を正確に把握することができた。ゾフレスは振り返る。「NASAのデータベースはまさに宝の山だった。まずX-15からリサーチを始め、ジェミニ5号、ジェミニ8号、アポロ1号、アポロ11号と進めていったの。宇宙計画が発展するにつれ、関連資料の内容も濃いものになっていた。アポロ11号計画の頃には、徹底的に分析されていたわ」
NASAのアーカイブに目を通すゾフレスらは、まるで当時の服装を調査する探偵のようだった。ゾフレスは説明する。「資料は膨大にあったけど、宣伝活動から打ち上げ実験まで、全てのイベントで写真を撮っているから、どの写真がどのイベントのものかを突き止めるのに苦労した。いちから学んでいる気分だったわ。アポロ11号用には宇宙服をそれぞれ2着ずつ作ったの。俳優用と、彼らのスタントマン用にね」

キャラクターたちの普段着については、「ライフ」誌の写真家であるラルフ・モースが撮影した当時の宇宙飛行士たちの私生活の写真を参考にした。ゾフレスは言う。「マイク、バズ、ニールについてはアポロ11号打ち上げ前に撮影された普段着の写真がたくさん残っていて、そこからヒントを得たの。写真に写っている通りに衣装を再現するのではなく、当時の人たちの服装からヒントを得て衣装に反映させたかった。当時はまだインターネットが無く、テキサス州エルラーゴで服を買える店はJ.C.ペニーとシアーズの2軒だけだった。だから皆が似た格好をしているように見えるの。他に選択肢が無かったのよ」
ゾフレスは続ける。「ジャネットの服装で時間の流れを表現したいと思った。本作の最初では20 代だったジャネットは、終わりでは30代になっているの。彼女とニールが成熟していく様子は、他のキャラクターよりも顕著に見られた」
映画の舞台は1961年から1969年のため、ゾフレスは約10年間分の衣装をデザインする必要があった。「衣装のための生地探しが一番大変だったけど、ヴィンテージの良い素材を見つけることができて、それでジャネットとニールの衣装を作ったの。店などで見つけたヴィンテージ服も多いわ。当時の服を使用することで、信ぴょう性を高めることができた」

撮影の締めくくりとして、宇宙飛行士を演じたシュレイバー、ハース、ストールの3人は撮影後もフロリダのケネディ宇宙センターに残り、スペースシャトル組立棟(VAB)の屋上からスペースXのファルコン・ヘビーの打ち上げを見学した。VABは、かつてサターンVが格納されていた建物である。
アポロ11号にも使用されたNASAのサターンV 以降、世界最強のロケットであるファルコン・ヘビーは、アポロ11号と同じケネディ宇宙センターの39A 発射台から打ち上げられた。打ち上げ後に2基のロケットブースターが無事に帰還したのを見届けた3人は、帰路につくためエレベーターの方に歩いていった。VABの屋上でエレベーターを待っている時、信じられないことに1羽の白頭鷲(ハクトウワシ)が3人のすぐ後ろに舞い降りたという。畏敬の念に打たれたというハースは、当日の思い出をこう語る。「一生忘れられない見送りだった。文字通り、『鷲(イーグル)は舞い降りた』んだ」