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【第7回/全16回 文字数:2248字】

宙を目指して:撮影とSFX

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撮影監督サンドグレンの独特の撮影技術の大ファンと言うシンガーは語る。「脚本家として、デイミアンとリヌスに撮影してもらえること以上の喜びはない。ライアンとクレア、そしてジェイソンとオリヴィアの家庭でのシーンは本当に美しかった。コリー、ライアン、ルーカスの3人がアポロ11号に搭乗しているシーンもとにかく素晴らしい。最高のアンサンブルだった」
サンドグレンは振り返る。「『ファースト・マン』は壮大なストーリーだが、非常に私的な物語でもあるから、シーンによっては私的さと親密さをより表現したかった。そういったシーンでは16ミリフィルムで撮影することにしたよ。粒子が荒い分、詩的な雰囲気を表現できる。物語が進み、NASAの世界に入り込んだシーンでは、35ミリフィルムでコントラストを強めている」

サンドグレンとチャゼルのタッグは、『ラ・ラ・ランド』に続き2度目。「リヌスは全てのショットを完璧にコントロールしていた。本作の雰囲気に合わせて、撮影は全て手持ちカメラで行っていた。登場人物たちが我を忘れた幸せな瞬間やいざこざが起こったシーンでは、ドリーやステディカムを使用している。手持ちカメラで撮影することで、俳優たちとのつながりも強くなるんだ。リヌスは常にキャストの近くにいて、ヘッドセットでデイミアンからの指示を聞いている。『彼にズームして、そこからパンで』という風にね」とゴッドフリーは振り返る。

月面着陸までの全ミッションの様子をカメラで撮影するのは、チャゼルと彼のチームにとっては願ってもない挑戦だった。視覚効果分野における革新的な技術とNASAから提供されたアーカイブ映像を活用し、製作陣はブレインストーミングを始めた。「撮影開始の8カ月前にミーティングを行い、NASAが数々のアポロ・ミッションの様子を収めた美しいアーカイブ映像をどう活かすかを検討した」とメリムズは説明する 既存のアーカイブ映像にはクオリティー面やカメラアングルなどの問題点があったため、そのまま使用することには否定的だった。そこで、これまでごく一握りの映画でしか採用されておらず、ましてや本作のような大規模な映画では一度も試されたことがない技術を駆使したあるユニークな解決方法を思いついた。
製作チームは、LED技術を使用してアーカイブ映像を撮影し直すことにしたのだ。メリムズは説明する。「何年も前から、人々はLED技術を使って車や電車の窓を通して見る背景をシミュレーションするようになった。そこで私たちはアーカイブ映像をLEDスクリーンに映し出し、宇宙船の窓越しに見えるようにした。アームストロングたちがジェミニ8号やアポロ11号の窓から見ている宇宙空間は、NASAの協力によって得られた美しいアーカイブ映像をLEDに映し出したものなんだ」

背景の用意が整い、次はJD・シュウォームと特殊効果チームがモーションベースのリグにそれぞれの宇宙船を載せる番だった。これにより、飛行の様々な段階で起こる振動や動きをシミュレーションすることができる。
「同時に、宇宙飛行のシーンや、ジェミニ8号に乗ったニールとデイヴィッドが経験する様々な試練や困難もシミュレーションした」とメリムズは付け加える。「宇宙船を動かし回転させたんだ。ジェミニ8号が高速スピンを続ける中、太陽が昇り沈んでいく。そのシーンを撮影するためには、宇宙船の動きをLEDで映し出した映像と同期させる必要があった。宇宙船はジンバルと呼ばれるモーションベースの回転台の上で動いていて、操作は特殊効果チームがコントロールしていた。本作が他の映画と違うのは、コンピューターを駆使してLEDによる投射とモーションベースの実際の動きを連結することができた点なんだ」

最大の難関は、特殊効果の大半をカメラの前で行うことだった点は言うまでもない。シュウォームは振り返る。「最近の撮影では、特殊効果にはCGを使用することが大半だが、デイミアンは全てのシーンをカメラの前で俳優たちを使って実際に撮影したがった。マルチアクシストレーナーのシーンや、宇宙で無重力を体験しているシーンまで全て、正面から難題に挑んでいったよ」
実際にカメラで撮影することで、シュウォームらにとってプラスな面もあった。撮影後に再生映像を見ることができるため、本編でどのように映るのかを事前に確認できたからだ。

映画製作やアリーナでのショーで照明を担当している革新的な技術系会社、ショーリグの協力により、製作チームは照明に関する最大の難題を解決することができた。「ショーリグのおかげで360度水平面を周回する太陽をデザインすることができた。しかもアコーディオン式のドロップマウントが付いているから、輪を描きながら上下するんだ。LEDスクリーンの映像とシンクロして太陽の光と動きを模倣することができた」とメリムズは説明する。

クロウリーと視覚効果チームがLEDスクリーンの前に設置されたモーションベースのジンバルの上に搭載した数々の宇宙船の1つに、ジェミニ8号のカプセルがある。デイヴィッド・スコットを演じたクリストファー・アボットは撮影の様子をこう説明する。「窓の外はグリーンバックではなく、巨大なLEDスクリーンだった。宇宙船が発射する時、僕たちは空を見ていて、やがて雲を抜けて宇宙空間に出る。宇宙船が回転し始めた時、地球がそばを通り過ぎるのを見ながら太陽を感じる。身体的にはきついシーンだったが、おかげでよりリアルに感じられたよ」