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【第9回/全16回 文字数:1727字】

宇宙へ飛び立つ:モジュールとカプセルのデザイン

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プロダクションデザイナーのネイサン・クロウリーは、常に心掛けているのはリアリティだと断言する。「常にリアルを追求している。例えば、本作ではミニチュアを使用している。新たに作り変えるのではなく、現代の技術を駆使しつつ伝統的な手法を採用しているんだ」
今回が初対面のクロウリーとチャゼルだったが、デザインの方向性ではすぐに意見が一致したと言う。クロウリーは振り返る。「デイミアンが本作を全て実写でやりたいと言った瞬間、参加を決めた。私は実際に触れられる物体に愛着があるし、デイミアンもそうだった。非常に困難だったが、楽しい挑戦でもあった」
チャゼルにとって重要だったのは、宇宙飛行士たちの挑戦がいかに危険だったかを伝えることだった。クロウリーは「点火されたブリキ缶に乗るようなもの」と表現する。当時の宇宙飛行は非常に過酷なミッションだったため、本作でNASAの魅力をアピールすることには興味がなかったようだ。「あの頃の宇宙飛行士たちは探検者だ。彼らがあんなにも窮屈な状態で何日も過ごしたことに興味を持った」とクロウリーは語る。

プリプロ段階でデザインチームとミーティングをした際、チャゼルは宇宙船の閉塞感と無限に広がる宇宙空間を対比させたいと提案した。当時の宇宙船を忠実に再現するには、NASAのデータベースが必要不可欠だった。
クロウリーは振り返る。「NASAは非常に協力的だった。フロリダのケネディ宇宙センターを訪問し、月面車やジェミニ号のカプセルを間近で見学した。ヒューストンのジョンソン宇宙センターではLLTV(月面着陸訓練機)を詳細までチェックできたし、あらゆるマニュアルや資料に目を通したおかげで、当時の宇宙船の閉塞感を再現することができた」
「『閉塞感』という言葉を使ったのは、当時のカプセルが本当に狭くて小さかったからだ。まるでイワシの缶詰に入るかのような感覚だ。NASAの目的はカプセルやミッションの質を継続的に向上させることだったから、解決案は1つではなく、常に何らかの改良を加えていた。だから、当時のデザインを理解する最善の方法は、実際に宇宙飛行をした人か訓練を受けた人から説明を受けることだった」

信ぴょう性を追求するチャゼルのもと、設計図やダッシュボードの計器の分析を行い、専門家やNASA職員の話を聞くことになった。クロウリーとチャゼルにとっては、パズルのピースを当てはめて事件を解決しようとする探偵のような気分だったようだ。
製作者によっては撮影環境や俳優の快適性を優先するためにセットのスケールを変更し、宇宙船の完全性を犠牲にするだろうが、チャゼルは妥協を許さなかった。ジェミニ計画とアポロ計画の指導者であるフランク・ヒューズは、自身が提供したアドバイスと完成品を見た時の驚きについてこう語る。「当時使用した蔵書や資料を現場に持っていった。計画の過程が記された本やチェックリストを提供しようとしたんだけど、すでに全てがうまく収まっていたんだ! 資料を持って現場に赴いたが、完璧に出来上がっていて口を挟む必要はなく、素晴らしい仕事ぶりだった。管制室にいると、当時の記憶が蘇って懐かしかったね。宇宙船のセットも見事だった。最高の仕上がりだったよ」

細部にまでこだわるクロウリーには、撮影のセットは実際の物よりも10%以上は大きくすべきではないという信念を持っている。ジェミニ号は実寸を採用しようとしたが、カメラの設置で問題が起こった。そこでデザインチームはシートを半分に折り、カプセル内にカメラが入れるように工夫した。
キャストのためにもセットの寸法調整が必要となった。自身が演じる人物の身長よりも背が高い俳優が何人かいたのだ。「アポロ11号は実寸よりも5パーセント大きい。X-15は実寸通り。だが、シートを少し低めに設置する必要があった。ライアンはニールより背が高いから、ヘルメットが天井に近づきすぎたんだ」とクロウリーは説明する。
慎重さを要したのは、セットの組み立てだけではないとクロウリーは続ける。「宇宙船などのセットはロジスティック面も考慮する必要があった。例えば月着陸船は実寸通りに作ったが、撮影現場への運搬方法を考えなければならなかった」